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2019/02/18

佐渡 2018/11/11

07:20-16:30  晴れ

 今回の佐渡遠征の最終日。
 帰りの船が夜7時半出航だったので,この日も丸一日使うことができた。
 
 今回の記事は,この日に撮影した写真を散りばめながら,今後の備忘録用に,この鳥について調べていたことを少しまとめてみよう。

 この鳥は,日本書紀に「桜花鳥(つき・つく・ときとり)という名で登場するなど,古来から,日本各地の風景にあって,人の生活に近い鳥だった。

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 近年になって,この国の風景から,何十年もの間,消えてしまっていたが,多くの人々の並々ならない熱意と努力によって,また,中国の協力もあって,人の手による繁殖と野生化が順調に進み,現在(2019.2.5時点/環境省佐渡自然保護官事務所),野生に棲息する個体は352羽になっている。

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 352羽のうち,放鳥個体の生存扱いが171羽に対し,野生で生まれた個体が181羽というから,すでに,野生生まれの個体が放鳥個体を上回っている。

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 自然繁殖の成功が続き,平成31年1月24日に発表された環境省レッドリスト2019では,野生絶滅」(EW/Extinct in the World)から,絶滅危惧ⅠA」(CR/Critically Endangerd)に変更されるにまでに至った。

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 日本の動物で,野生絶滅から絶滅危惧種に復活するのは,初めてのことらしい。

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 繰り返しになるが,この復活は,ひとえに関係の方々の手によるものであり,この間のご努力には頭が下がる思い。

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 ただし,絶滅危惧種に復活といっても,これは,≪飼育・栽培下,あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種≫から,≪ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの≫に変わっただけで,再び風景の中から消えてしまう可能性は依然と高いままだ。

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 同じ絶滅危惧ⅠAのカテゴリーには,ハクガン,シジュウカラガン,チシマウガラス,ヘラサギ,ウミスズメなどが掲載されているが,これら鳥屋お馴染みの鳥と比べると,より心配な状態が続いているように思える。

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 この鳥が飼育下以外の野生で絶滅したのは,主に次の3つが原因と言われている。

1 乱獲美しい羽,食用肉,害鳥とみなされての駆除
2 環境の変化森林伐採(繁殖場所,ねぐら),水田開発(餌場)など
3 農薬の使用田んぼ等(餌場)での毒性農薬の摂取

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 まず,野生絶滅の原因と思われる各要因が,現在どうなっているのか,振り返ってみる。

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 このうち,「1」の要因については,国レベルで行政による保護の施策があり,計画的にその施策が実行トキ野生復帰ロードマップ2020,など)されているので,現在は完全にクリアしている。

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 「2」と「3」については,佐渡市で「朱鷺と暮らす郷づくり」認証制度という事業が,2008年から始められるなど,佐渡に限っては,この鳥が生きやすい環境づくりが,確実に進められてきた。

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 この制度は,田んぼの無農薬,減農薬を進めるだけのものではなく,水田での「江」の設置,ふゆみずたんぼ,魚道の設置,ビオトープの設置など,多方面から環境保全型の農業に切り替えることによって,餌場を確保し,この鳥が住みやすい環境を整えるのが目的。

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 この鳥にとっては非常に良い制度だが,農業に従事する方々にとっては,作業量・作業時間が増加することに比べ,それに見合った金銭的なメリットは少ないと思われる。

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 この制度が成り立ち,現実にここまで環境が整ってきているは,農家の方々の理解と善意があってこそのことだ。

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 前回,今回と,この鳥を観察していると,ドジョウやカエル,小魚,昆虫,ミミズなど,田んぼ周辺に棲息する様々な生き物を糧にしているようだ。

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 仮に,日々ドジョウを10匹食べているとすれば,1羽が年間で3,650匹,352羽いれば,年間で130万匹弱のドジョウを食べていることとなる。

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 数にすればすごい数だが,たぶん,これ以上に食べている。

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 この鳥が生きていくためには,それだけ豊かな環境のバックボーンが必要,ということ。
 
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 この鳥は,放鳥後,本州に渡ってきたこともあるが,ほとんどの個体が佐渡に残っている。H31.2.5時点の情報では,本州にいるのは1羽だけ。

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 しかも,放鳥した地域である新穂地区周辺に個体数が多い印象だ。
 あまり移動しない鳥かもしれないが,この地区は,この鳥の保護を推進するメッカであるため,環境が整った田んぼもそれなりに多いかもしれない。

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 この鳥が絶滅危惧種から抜け出すためには,佐渡以外の地域でも,野生繁殖を実現させていくことが必要と思われるが,広く環境保全型農業の形態が普及するなど,いたる所で生き物が豊富な環境が整えられることが必要。

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 どの地域でも,また,すべての田んぼが,というのはむずかしいかもしれないが,環境保全に関する意識は以前とは比較にならないくらい浸透してきたし,食の安全に対する意識も強くなってきているので,佐渡の田んぼのような環境の地域も本州でもある。

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 ふゆみずたんぼの取り組みがその代表的なもの。

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 佐渡市では,「生き物を育む農法」により米を栽培し,朱鷺と暮らす郷づくり認証制度で認証された米には,「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」と印刷された米袋とシールが配布され,他の米との差別化をしているが,宮城県の伊豆沼・蕪栗沼周辺でも,「ふゆみすたんぼ農法」で栽培したコメを「ふゆみずたんぼ米」として販売している。

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 佐渡市でも,大崎市(宮城県)でも,この米をふるさと納税返礼品としているので,こうした取り組みを応援するために,ふるさと納税をしても良いかもしれない。ふるさと納税は,豪華な返礼品で,今,色々と議論されているところだが,こうした使い方が本来のもの。

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 佐渡市では,寄付金の使途を指定でき,「トキと暮らす環境の島づくり応援コース」という選択肢が用意されている。大崎市は,「世界農業遺産の資源を保全するための事業」という選択肢が用意されている。

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 ネットで調べてみると,渡良瀬遊水地(栃木県小山市)周辺田んぼでも,ふゆみずたんぼの取り組みを行っていて,ブランド米を出荷しているようだ。
 ラムサール条約湿地が全国で52か所にもなっているので,こうした取り組みが広がって行けば良い。

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 ただ,年々高齢化が進んでおり,また,農業以外でも働かないと食べていけない状況にあり,さらに,米離れの傾向もあるので,田んぼ自体,どんどん減っていくことが心配だ。

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 環境を整えていくはとても大変なことで,実現困難ではないかとも思えるが,さらに,遺伝的な多様性を持たせることも必須。

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 今後何があるかわからないが,全個体が同じような性質の遺伝子を持っていたら,環境変化や病気などによって,同じように全部死んでしまう可能性だってある。

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 たとえば,鳥インフルエンザは,野生のカモは自然に保有していて,かつ,発病していないが,人工繁殖して飼育されている白色レグホンなどは,1羽が罹患して発病してしまったら,その禽舎のニワトリが全滅してしまう。

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 遺伝的な多様性がないと,そのようなことも起こりかねない。

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 遺伝的多様性を確保するため,昨年(2018年),11年ぶりに中国から2羽の提供を受けているが,中国のトキも,いったん2家族7羽にまで減っていた状態なので,種全体で遺伝的多様性に乏しい状況にある。

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 中国でも日本でも野生繁殖が成功し,現在,個体数が劇的に増加してきているが,元をたどれば,この2家族。

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 7羽というが,2家族なので,遺伝子レベルでは4羽分に過ぎない。
 今存在するすべてのこの鳥のルーツがこの4羽。アダムとイブ。

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 ありえない。

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 一旦絶滅同様になってしまったので,これはどうしようもないこと。
 いずれ,種として弱い状態であることは間違いない。

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 だから,心配。

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 数だけ増えても,安心は,できない。

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 現在,ここまで増えてきたので,この鳥本来の行動が,自分の目で観察できるようになってきた。
 こういう光景が,今後もずっと見ることができると良い。

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 繁殖期の樹上での交尾。(2018.5)

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 繁殖期の黒くなった姿。(2018.5)

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 繁殖期は大きな群れになることはないが,繁殖期を過ぎると最大十数羽の群れで行動。

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 朝,ねぐらから,田んぼ(餌場)へ。

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 夕方,田んぼからねぐらへ。

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 ねぐらは林の木々。

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 ねぐら入りは,多数の個体の乱舞。

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 (今回,ねぐら入りは偶然に立ち寄った日帰り温泉の駐車場から観察できた。)

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 人が野生絶滅させたのだが,今は,人の手がないと,また絶滅してしまう,
 この鳥に関しては,絶滅の淵に落ちないよう,上流に向け,今後も,ず~っとオールを漕ぎ続けなければならない。
 
 できることは何だろう。
 
 
【観察できた鳥】 (11/09-11/11の3日間)
 
 ウミネコ,セグロカモメ,ウsp,オオバン,オオミズナギドリ,ハシボソガラス,トキ,トビ,ダイサギ,コハクチョウ,ヒシクイ,キジバト,ムクドリ,ヒヨドリ,ノスリ,ハシブトガラス,モズ,エナガ,ハクセキレイ,アオサギ,カシラダカ,カワラヒワ,マガモ,カルガモ,カンムリカイツブリ
 
【その他写真】

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