« 青下ダム 2011/05/15 | トップページ | 蒲生-大沼 2011/09/25 »

2011/06/22

蒲生干潟 2011/06/04

08:00 霧(晴れ)

 ガソリンが入手でき,動けるようになった4月2日土曜日,蒲生の現場に行った。そのときは,最悪の光景を目の前に,車を降りることもできなかっし,道路にがれきが重なって,干潟までたどり着くこともできなかった。
 4/1付けの新聞には,蒲生干潟が「復元不能」と書かれていたが,本当にそうなのか。

 あれから2か月が経過していた。

 この日,道はガタガタながら何とか干潟までたどり着くことができた。がれきがずいぶん片付けられたようだ。

 しかし,蒲生の町は荒涼たる光景に変わっており,町がなくなっていた。

110604e_0004_2
 議論を重ねて立派な防潮堤を整備し,津波被害に備えていたのに,大きな暴力の前には何の役にも立たなかった。

 合掌。

 蒲生干潟は,若い頃からシギ・チドリの憧れの地で,就職して仙台に引っ越して来たときは,職場と蒲生干潟の間にアパートを借りたほどだった。

 それだけに愛着もあるし,思い入れもある場所だ。
 山形大学野鳥の会に在籍していた30年以上も前,遠征で来た蒲生干潟にうじゃうじゃとシギチがいたのをよく覚えている。 

 震災後初めて見た蒲生干潟の光景。

110604s_0014_2

110604s_0013_2

 あれほど生い茂っていたヨシ原が消え,砂ばかりとなっていた。以前のことをよく知っている目で見ると,蒲生干潟の形はかろうじて残ってはいるが,命にあふれていた風景が荒涼とした風景に一変していた。

 ヨシ原に依存していた多くの生き物はどうした?
 干潟に無数にいたカニや貝はどうなった?

 大津波は町だけではなく,自然自体も,生態系も,破壊してしまった。

 ここにあった防風林(松林)もなくなり,大きな水たまりになっている。

110604s_0017

 ここにはカラ類などが住んでいたはず。

 そして,蒲生干潟の象徴である「元祖日本一低い山」の日和山(標高6.05m)も消失していた。
 日和山がなくなったことは新聞記事でも見ていたし,人からも聞いていたが,自分の目で見るまでは信じられなかった。

110604e_0009
 上の写真の真ん中。土がむき出しになっている場所が日和山があった場所だ。地面がえぐれて,跡形もない。
 左手に,日和山の頂上にあった大きな松の残骸が見える。

 ・・・。

 日和山の裏手にあった小さな養魚場に津波注意を呼び掛ける看板が残っていたのが何ともむなしい。

110604s_0019

 遊歩道を兼ねていた防潮堤は,一部決壊しており,土嚢が積んであった。

110604s_0018

 これでは,こちらを通って養魚場があった方には行けない。

 震災前は,日和山の上に登ると,いつも干潟の奥に多数のサギ類が見えたが,この日いたのはダイサギ1羽とコサギ1羽だけ。

110604e_0034

110604e_0037

 魚を追いかけるような行動をしていたので,たぶんボラなどが入ってきているとは思うが,多数のサギ類が生活できるような環境ではなくなった,ということだ。
 元の環境に戻らない,とは思わないが,かなり時間がかかりそうだ。まずはヨシ原の復活か。

 ここの干潟にいた鳥は,この2羽の他にはウミネコだけだった。

110604e_00016

110604e_0029

110604e_00057

110604e_00059

 干潟には鳥もいないし,人もいなかった。

 釣りや貝掘り,水遊び,サーフィンなどで常に人でにぎわっていた場所だが,まだ,まだ,そういう状況ではない。

 人も鳥もいなくなって,今はだだっ広い砂地になっているが,潮汐に従って現れる干潟自体は存在している。

 大津波で砂や泥がかき回されたのだろうから,ゴカイやカニ,貝などの底生生物に影響がないわけはないと思うが,食べ物があるのであれば,シギ・チドリの渡りの中継地の役割は果たしていくのではないだろうか。

 ゴカイや節足動物や貝などは,そう簡単には死滅しないはずで,時間はかかっても必ず復活してくると思う。人工的な埋立地にもシギ・チドリの餌となる底性成物が湧いてくるのだから,ここの生き物がすべて死んだはずはない。
 ヨシなどの植物も復活するのは時間の問題なのではないだろうか。

 というか,そうであれ,と強く願う。

 干潟から振り返って後ろを見ると,ヨシ原がわずかに残っていて,ここではオオヨシキリがにぎやかにさえずっていた。

110604e_00067

110604e_0099_2

 昨年までの広いヨシ原はなくなったが,以前から空地だった場所に緑色の若いヨシが生えてきていて,ここがオオヨシキリたちの居場所となっていた。

 ギョギョシ,ギョギョシ,とにぎやかなさえずりが心地よい。

 そして,ここにはコヨシキリたちも入っていた。

110604e_0136

110604e_0195

110604e_0206

110604e_0207

110604e_0208

110604e_0217

110604e_0218

110604e_0226

110604e_0234

 オオヨシキリよりも澄んだ高い声で,キョキョシ,キョキョシ,とさえずっている。今年もまた来てくれていた。

 コヨシキリの撮影をしていると,養魚場方向からホオアカの声も聞こえてきた。

110604e_0158

110604e_0154

 ホオジロよりも短い,口早のさえずりだ。

 コイの養魚場だった奥の方では,相変わらずトビとカラスが争っていた。

110604e_0170

 こういう,ごくごく普通の光景がなんとも言えず嬉しい。

 ここまでで1時間程度。

 絶対にきているだろうと信じていた夏鳥たちは,例年の数よりずっと少ないものの,居ついてくれていた。少なくともオオヨシキリとコヨシキリ,ホオアカの3種は,今年もここを繁殖地として選んでくれたようだ。
 鳥の繁殖地としての蒲生は壊滅したわけではない。

 車に戻るとき,以前はうじゃうじゃいたアシハラガニも,1匹だけ見かけた。
 カニもやっぱり死滅したわけではなかった。

 こういう状態で晴れやかな気持ちになるわけはないが,少しホッとした気持ちになる。
 新聞報道にあった,鳥の楽園としての蒲生干潟が「復元不能」というのは,実際は,ない。

110604s_0025
 

 上の写真は,神社があった所から西側を撮影したものだ。
 蒲生地区の貞山運河は,仙台港を掘削したときにその土で埋め立てて公園としていたのだが,そこに再び水がたまっていた。

 藩政時代はここに「御舟溜まり」があって,「米の道」である水路の要衝になっていた地区なのだが,1000年に1度という大震災でこんな光景になってしまった。

 ここを立ち去るとき,七北田川の岸辺で何か動くものがあった。

 お。

 車を止めて確認すると,なんとキョウジョシギだった。しかも。♂♀のペアだった。

110604e_0260
 思いがけない出会い。

 そして,ここにはコチドリも入っていた。

110604e_0302

 蒲生干潟は砂地中心なので,石っころが好きなキョウジョシギ(Turnstone)を見かけることはこれまでなかったし,イカルチドリやハジロコチドリ,シロチドリと出会っても,ここでコチドリと出会った記憶はない。

 環境が変わったせいなのかな,ともちらっと思ったが,いずれ,シギ・チドリの仲間もちゃんと寄ってくれていたのは嬉しいことだ。

 夏から秋にかけてのシギ・チドリシーズンも期待して見ていこう。

 蒲生を立ち去るとき,小学校の時計が午後2時47分で止まっているのが目に付いた。地震が起きた時間の1分後だ。長い長い揺れだったので,まだ盛んに揺れている時間だったと思う。
 たぶん電気時計なので,地震発生とほぼ同時に停電して止まったのだろう。

110604s_0029

110604s_0028_2

110604e_0310_2

110604e_0311_2

 津波はこの時間よりももっともっと後の時間にやってきた。

 この後,南蒲生の方に行こうかと思ったが,こちらは関係者以外立入禁止。

 仙台市内の7割の汚水を処理するという「南蒲生浄化センター」が壊滅的な被害を受けてしまっており,悪臭が県道の方までただよっていた。
 復旧するには年単位の期間が必要なようだ。

 仙台市内ではほとんどの地域で上水道が回復したが,下水道問題がこれから大きくならなければ良いのだが…。

 大沼,赤沼周辺の田んぼには,がれきや流された車が大量に入っている状態だった。特に車が田んぼに点々とあるのが,そういうことになった状況など,色んなことを想像させる。

 無残な光景は2か月前とほとんど変わりなし。
 がれき撤去作業は住宅地が優先されるので,農地に着手するのは早くても夏が過ぎてからになるのではないだろうか。

 例年であれば,金色の麦穂が風できらきら光る「麦秋」の光景が見られる季節なのだが,見る影もなし。

 大沼の周回道路も立入禁止で,近くに行けず。
 よくわからないが,ここのバンたちの繁殖は,今年はダメかもしれない。

 赤沼の方は,沼の周囲にあったフェンスが押し流されて何もない光景になっていた。

110604s_0030

110604e_0317

 いたのはカルガモだけ。
 周辺田んぼもがれきだらけでサギ類の姿もなし。

 この後,仙台東部道路に乗って,岩沼・亘理方面に向かったが,鳥の海ではがれき撤去作業のトラックが多く走っており,邪魔になりそうなので,途中で行くのを自粛。
 牛橋河口の方は,県道が途中で通行止めになっており,たどり着けず。

 コアジサシの繁殖は今年どうなっているのだろう。

 この途中の岩沼田んぼは一面に水(海水?)が溜まっており,広大な沼のようになっていた。少なくとも今年の田植えは無理だ。
 水がない場所でも田植えしている田んぼは皆無だった。岩沼から亘理にかけての一帯は,国の補助を得た「ほ場整備事業」により広大な田園地帯となっていたのだが,見る影もなし。

110604s_0032

110604s_0034

 シギ・チドリの姿など期待すべくもない。

 ここの生態系は田んぼが支えていたので,田んぼが復活しない限り,鳥も生き物も戻って来ない。
 人が元気になって活動を再開してもらわないと,自然も元気になれない。

 この周辺は,元々地盤が低く,湿地だったと思われる土地なのだが,地震のためさらに地盤が低下し,0m地帯となっており,さらに塩分が大量に入ってきており,素人の頭ではどういう方法で復旧できるのか見当もつかない。
 先行きどうなるのかとても心配な状況だ。

 この後,国道6号の方に大きく迂回して帰ったのだが,内陸側の田んぼでは田植えをしていた。

110604e_0320

 ここでは,畔にウミネコが1羽うずくまり,日向ぼっこしていた。

【出会えた鳥たち】

キンクロハジロ,カルガモ,ウミネコ,ダイサギ,コサギ,スズメ,カワラヒワ,ヒバリ,ハシブトガラス,ハシボソガラス,トビ,ムクドリ,オオヨシキリ,コヨシキリ,ホオアカ,ツバメ,キョウジョシギ,コチドリ,ハクセキレイ

110604s_0013

110604e_0099

« 青下ダム 2011/05/15 | トップページ | 蒲生-大沼 2011/09/25 »

0503 宮城県/蒲生」カテゴリの記事

コメント

蒲生干潟が津波の被害にあった様子がyamameさんの
レポートで大変よくわかりました。
あの日本一低い山も無くなってしまったんですね。
またシギチの訪れる干潟に回復して欲しいですね。

投稿: りんご | 2011/06/26 20:56

 蒲生のことは,誰か鳥屋が書いておかなければ,という思いでメモ書きしました。人の生活再建はとんでもなく大変だと思いますが,鳥の方は何とかなりそうな気がします。
 日和山は元々人の手で造られた山なので,今後,蒲生復活の象徴として再建されたら良いなぁと思っています。

投稿: yamame | 2011/06/27 07:43

yamameさん、こんばんは。
蒲生の様子、よく分かりました。震災以来、宮城の方へは、行ってないので、改めて様子が分かりました。レポートありがとうございます。
蒲生へは、よくお邪魔しておりましたので、大変ショックです。せっかく、工事が終わったばかりで、住民の方々も安心していたのでしょうが、役に立たなかったのでしょうね。想定外じゃ、すまされませんね。でも想定できても、今回の津波を抑えられる防波堤って作れるんでしょうか? 変なこと考えてしまいました。

投稿: KAN | 2011/06/27 17:45

 想定外て言葉に反応して怒っている人たちが多いのですが,怒っている人たちも含め,誰もこんなことを想定できなかったんですよね。私自身,夢のような出来事で,今でも,朝起きたらないことになってくれないか,と思ってしまったりします。
 ただ,気になって,コクガン飛来地の種市をネット上で調べて見たら,12mもの高さの防潮堤がしっかりと津波を防いで,町を守ったようです。被害もずいぶんあったようですが,防潮堤がなければもっと大変なことになっていたようです。
 すごい堤防だなぁ,と行くたびに見上げていたのですが,今回は本当に役立ったようです。
 学ぶことがありそうです。

投稿: yamame | 2011/06/27 21:00

 yamameさん、お久しぶりです。仙台近郊の状態が気にはなっていたものの、予想以上に大変な状態でとても残念です。日和山がなくなってしまったことは、先日送られてきた「蒲生を守る会」の会報で知りました。いつの日か復活して欲しいです。
 色々大変だと思いますが、1日も早い復興を願っています。

投稿: ペン | 2011/08/11 20:33

 ベンさん,コメントを付けていただきありがとうございます。
 この8/12,蒲生に行って来たのですが,町のガレキはすっかり片づいてきれいになっていました。干潟も,アオサギの群れが戻ってきましたし,コサギやダイサギの数も増えたようです。以前の数とは比較のしようもありませんが,カニの仲間もちゃんと生き延びています。秋の渡りのシギチも立ち寄ってくれると思っています。
 時間がかかるかもしれませんが,日和山も蒲生干潟も,きっと復活します。大丈夫です。

投稿: yamame | 2011/08/15 18:45

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 青下ダム 2011/05/15 | トップページ | 蒲生-大沼 2011/09/25 »