仙台市青葉区 2011/05/05
09:00 晴れ
去る4/29は「震災復興キックオフデー」だった。
この日から東北新幹線も仙台市地下鉄も全線開通し,ベガルタ仙台も楽天イーグルスも仙台に帰ってきて感動的な試合を見せてくれた。勝利後のベガルタ手倉森監督の涙にもグッと来たし,楽天の嶋選手会長のあいさつにも感動した。
私もいつまでもぐずぐずしていては良くない。
何もない年であれば,竜飛岬,飛島,と遠征で忙しい時期だったはず。
職場の仲間たちは休日・夜間も交代で働いているし,まだ大きな余震の発生が心配なので遠くには行けないが,近くのフィールドに出てみよう。
まず向かったのは家から7~8kmのところにある大國神社の山野草公園。いつか行ってみようと思っていた場所なのだが,休日になるとつい遠くにばかり行ってしまい,今回が初めてだった。
まだ三脚を担ぐ気持ちにはなりきれず,持っていったのは,100-400㎜とマクロ,そして,コンデジ,双眼鏡だ。
何となく1人では心細く,妻にも同行してもらっていた。
歩いてみると雰囲気の良い明るい林道で,歩道がきちんと整備されていた。山の一部が公園となっているので,登り下りも適度にあり,歩いていて気持ちが良い。
鳥見するには遅すぎる開園時間が致命的だが,散策する分にはとても良い所だった。
歩き始めてすぐに目に付いたのがイカリソウ。
ちょうど今が盛りで,あちらこちらにたくさん咲いていた。そこら中イカリソウだらけと言っても良いくらいだった。
久々のフィールド。独特のこの形が心に沁み入るように嬉しい。
嬉しいことに,もう終わっていると思っていたカタクリも咲いていた。
山全体の風景はこんな感じ。
木々に若葉が萌え出て,1年で最も美しい季節がやってきていた。命が復活するような春のこの風景が大好きだ。
遊歩道の脇には,スミレの仲間やチゴユリ,リンドウなども咲いていた。
これはイワウチワの群落のようだが,花は終わっていたようだ。盛期にはさぞ見事だっただろう。残念ではあったが,人間世界で何があっても着実に季節が移り変わっていくことが肌で感じられる。
鳥は声を楽しむことが中心となったが,エゾムシクイ,センダイムシクイ,ヤブサメ,メジロなどのさえずりを充分に楽しむことができた。
ぐぜるように,ささやくようにさえずっていたのはコサメビタキだったか。
写真はたまたま近くに来た鳥たちを自然のままに撮っただけ。
ヤマガラ。
センダイムシクイ。
コゲラ。
チョウの仲間ではミヤマセセリが目に付いた。
遊歩道を先導するように,黒い小さな影が飛び,地面に降りるとすっかり背景に溶け込んだ。
一旦地面に降りると,足元にいても目をこらさないと探し出せなかった。
図鑑によると,春の早い時期から出るチョウのようだ。
さらに,主役級のタテハチョウの仲間とも出会うことができた。
これはアカタテハ。
運良くタンポポの上に乗ってくれた。
こちらはルリタテハ。
ルリタテハが飛ぶと,翅の瑠璃色が輝いて,ハッとするほどきれいだ。宝石が飛んでるかのようだ。
タテハチョウの仲間は,飛び立っても,同じ場所に戻ってくることが多いので,一旦出会うことができれば,思う存分楽しむことができる。汗をかく季節になると体に止まってくれることもあるチョウだ。
開けた場所には,お馴染みのモンキチョウやベニシジミも観察できた。
モンキチョウの♀は,モンシロチョウやスジグロシロチョウのように白いので,飛んでいるときに見分けるのはむずかしい。
しかし,止まってくれると翅の裏面に独特の模様が見える。
ベニシジミは小さな頃から慣れ親しんだチョウで,出会えると,お風呂に浸かったような「ホッと感」がある。
この個体は後翅に青い星を持っていた。
久しぶりのフィールドで,縁起が良さそうな個体と出会うことができた。
ナナホシテントウも今季初だった。
このタンポポの花に潜りこんでいる虫は何だったのだろう。ハナアブの仲間と思って撮影したのだが,良く見るとニホンミツバチのようにも見える。
タンポポにこんなにたくさん花粉があるイメージがなかったが,虫の体は花粉まみれのようだ。生きている,という感じがする。
タンポポの仲間では,セイヨウタンポポのほか,日本固有種のタンポポもあった。
セイヨウタンポポと異なり,今の時期にしか観察できないタンポポだ。
セイヨウタンポポでないのはわかるが,タンポポには種類が多いようで,種の特定まではできない。この地域にある日本タンポポはエゾタンポポなのだろうか。
このタンポポは,葉がロゼッタ状に地面に広がらず,やや立ち加減になっていたのが印象的だった。元気が良さそう。
この後,仙台市水道記念館の近くにある遊歩道に行って,青下ダム周辺を歩こうと思っていたのだが,山形方面に行く車で道が渋滞していたので,中止。
サイカチ沼周辺に戻ることとした。
途中,錦ケ丘団地の交差点近くの空地にレンゲの群落を見つけた。
レンゲは休耕田に見ることが多いが,ここは国道(愛子バイパス)脇のただの空地だ。こんな身近にこういう光景があったとは。
錦ケ丘に住んでいる人たちのうち,この風景に気が付いている人は何人くらいいるのだろう。皆に教えてあげたい気分。
ここの近くの土手にはカキドオシも満開だった。
まずはいつも行く月山池(つきやまいけ)の下の田んぼの空地に車を止める。
いつもなら澄んだ水に魚影が見えるのだが,水が濁っていて何も見えない。そろそろ田植えが始まる田んぼもかなり濁っている。
この日は,サイカチ川や田んぼ,用水路には何も見つけられず。
サナエトンボやチョウの仲間を期待していたのに残念だった。
ただ,ヤマブキの黄色がとてもきれいで,色が浮いて光っているようだった。
そして,たまたま目の前に出てきたヒヨドリ,ホオジロ,アオジも撮影。
ここに続く林道に入ると,さっそくタテハチョウの仲間が飛んだ。
キタテハに似ているがシータテハのようだ。
さらに進むとシジミチョウが飛んでいた。
シジミチョウの仲間は止まって翅の裏側を見せてくれないと識別できない。
これはルリシジミだった。
さっきのベニシジミに続きシジミチョウ2種目だ。
今日何度か出会ったミヤマセセリはここにもいた。
この林道では昨年初めてモンキアゲハを観察したのだが,アゲハにはまだ時期が早かったようだ。
花は,ここでもスミレ類が目に付いた。
私には見分けがつかないが,スミレ類が好きな人たちにとってはたまらない季節だろう。
これは,これまでも良く見かけてきた花だったが,何なのかよくわからなかった。
しかし,時期になるとキイチゴがたくさん生ることを思い出し,「キイチゴ」でネット検索すると,同じ花の画像が出てきた。
「モミジイチゴ」だったようだ。
そして,ここにもまたセイヨウタンポポではない和製タンポポが咲いていた。
何なのだろう。「エゾタンポポ」で良いのか。
この林道は仙台市天文台付近までつながっているのだが,天文台に行っても仕方ない。
途中で引き返す。
車の近くまで戻ってくると,日の当たる土手にシマヘビが出ていた。
この周辺はヘビがとても多く,以前から良く見かけていたが,こんな好条件で出会えたことは初めてだった。
擁壁(ようへき)の上に乗っかっていたので,目の高さで撮影できた。
ヘビが嫌いだ,という人が多いが,こんなきれいな生き物を毛嫌いしてはいけない。
誰でも噛まれるのは嫌だが,きれいな上,見ていて飽きない不思議な生き物だと思う。
普段は見つけてもすぐに姿を消してしまうことが多いが,今回は顔付きをしっかりと観察でき,また,閉じた口の隙間から舌をチョロチョロと出し入れしているところも観察することができた。
上の写真のように,舌の撮影までできたのは大幸運だった。
ヘビというと猫のように瞳孔が縦長イメージもあるが,シマヘビは,この写真で見るように瞳孔が丸かった。アイダイショウやヤマカガシなども瞳孔が丸いようだ。
良く見るとめんこい顔付きだ。
もっとゆっくり見ていたかったが,残念ながら,やはり見ている間にするすると降りて来て,石の隙間に隠れてしまった。
石の隙間に入りきる直前の最後の写真,麺類をすすり込む光景とかぶって面白い。チュルっと,音が聞こえそうだ。
やや引いた写真で見ると大きさが少しわかると思うが,この個体,シマヘビにしてはかなり大きいと思う。1m半以上はあったかな。
この擁壁の反対側にはハルジオンが咲いていた。
今まで「ハルジョオン」と思っていたが,「春紫苑」と書くので,「ハルジオン」というのが正確のようだ。よく似ているヒメジョオンは,「姫女苑」と書くので,「ヒメジオン」とは言わない。
「ハルジョオン」という呼び名は,「ヒメジョオン」との対比から生まれたようだ。
ハルジオンとヒメジョオンは似通っているため,茎を折って中空かどうかを確かめたくなるが,図鑑で調べてみると,そうしなくっても簡単に区別できることがわかった。
忘れないため,以下にメモしておこう。
- ハルジオンの茎は中空 / ヒメジョオンの茎は中が詰まっている。
- ハルジオンの葉は茎を抱いている / ヒメジョオンの葉は茎を抱かない
- ハルジオンの蕾(つぼみ)は花序全体がうなだれる / ヒメジョオンの蕾はあまりうなだれない。
- ハルジオンの花の色は淡紅色~白色 / ヒメジョオンの花の色はふつう白色
この他にも違いはたくさんあるが,これだけ覚えておけば大丈夫だろう。
この近くにこんな花も咲いていた。
以前北海道で見た「コウリンタンポポ」に良く似ているが,であれば,花は鮮やかなオレンジ色のはず。この花はどう見ても黄色だ。
黄色いタイプもあるのかと思ってネットで調べてみると,「キバナコウリンタンポポ」という別種があるようだ。いずれにせよ外来種。
それか。
この上空ではツバメの群れが飛んでいた。
群れていたのでイワツバメかと思ったが,全部ツバメだった。
集団になっていたのはまだ渡りの途中なのだろうか。巣立った子どもたちにしては時期が早いような気がする。
ノスリというと冬鳥というイメージがあるが,このノスリはこの周辺で繁殖しているものかもしれない。冬以外の時期,以前もこの周辺で見かけたことがある。
私が知らないだけで,意外に繁殖ノスリも多いかもしれない。
ここまででお昼近くになってしまい,さらに同行者が,おしっこに行きたい,と言い始めた。サイカチ沼の駐車場に簡易トイレもあるのだが,ぜいたくなことに,嫌だ,という。
仕方ないので,あともう1か所だけで,お終いにすることとした。
サイカチ沼の先の道路は崩落してしまい先に行けなくなっているが,サイカチ沼にかかる橋の手前までは行くことができる。
車で移動し,道路右手にある土の駐車場に車を置くと,そこに「白いタンポポ」の群落があった。
この日見てきたどのタンポポよりも大きく,がっしりした感じのタンポポだった。
上に「白いタンポポ」と表現してしまったが,中心部から縁にかけて黄色い部分がかなり多く,全体には「淡黄色」というイメージだ。
手持ちの図鑑で調べると,「シロバナタンポポ」という種があるようだが,ネットや図鑑の写真で見るとそれではないようだ。そもそもシロバナタンポポは西日本に分布している種だった。
もしかすると,「ウスジロタンポポ」とか「ウスジロエゾタンポポ」とかいうものかもしれないが,よくわからない。
近くにあったこのタンポポは,花全体が黄色く,ほんの一部だけが白くなっていた。
数年前,白い花のタンポポは青葉山の仙台城周辺の空地で群落を観察したことがあるが,向こうのは,もっとしっかりと全体が白かったような気がする。
タンポポの仲間をわかりやすく解説しているHPや図鑑があれば調べて見たいところだ。
この後,林道をつり橋の所まで歩いてみたが,その先が通行止めになっており,引き返すことに。崩れている所があるのかもしれない。
仙台市がケアするべき被災個所があまりにも多すぎるので,通行できるようになるまでには,年単位で考えなければならないかもしれない。
人が生活する場所の回復が優先されるのは言うまでもなく,その対応もスタートしたかどうかの状態だ。
車までの帰り道,青い空を背景に,山桜がとてもきれいだった。
海岸部で町が壊滅しても,内陸部で家や道路が崩落しても,そして,人々が大変なことになっていても, 何ごともなかったかのように,いつもどおり春はやってきて,葉が萌え出て,花が咲き,チョウや鳥などの生き物が姿を見せる。
当たり前でない大きなことがあると,当たり前のことがことさらありがたい。
3/11以来,夢なら覚めてほしいと思う日々が続いたが,現実は現実として変わらず,受け入れていくしかなく,ここから始めるしかなく…。今の状況をまず受け入れるしかなく,ここから始めるしかなく…。
変わってしまったものは大きいが,変わらないものは確固としてある。
帰り道,ちょこっとだけ渓流に寄り道したら,今季初のオオルリの声が響いていた。
【観察できた鳥】
(大國神社山野草公園)
ウグイス,ホオジロ,キジバト,エナガ,ヒヨドリ,ハシブトガラス,メジロ,ヤマガラ,エゾムシクイ,センダイムシクイ,コゲラ,アオゲラ,コサメビタキ(?),キジ,シジュウカラ,ハクセキレイ,ヤブサメ,カワラヒワ,ツバメ
(サイカチ沼周辺)
メジロ,ハクセキレイ,クロツグミ,アオジ,ホオジロ,ヒヨドリ,ヤブサメ,モズ,ハシブトガラス,ヤマガラ,シジュウカラ,ツバメ,ノスリ,コゲラ,ウグイス,エナガ,カケス,オオルリ
【付録】
<東北楽天イーグルス嶋基宏選手会長あいさつ全文>
本日は,このような状況の中,Kスタ宮城に足を運んでいただき,またテレビ,ラジオを通じてご覧いただき,誠にありがとうございます。
この球場に来ることが簡単ではなかった方,ここに来たくても来られなかった方も大勢いらっしゃったかと思います。
地震が起こったとき,僕たちは兵庫県にいました。遠方の地から,家族ともなかなか連絡が取れず,不安な気持ちを抱きながら,全国各地を転戦していました。
報道を通じて被害状況が明らかになっていくにつれて,僕たちもどんどん暗くなっていきました。その時のことを考えると,今日,ここKスタ宮城で試合を開催できたことが信じられません。
震災後,選手みんなで,自分たちに何ができるか,自分たちは何をすべきか,を議論して,考え抜き,東北の地に戻れる日を待ち続けました。そして開幕5日前,選手みんなで初めて仙台に戻ってきました。変わり果てたこの東北の地を目と心にしっかりと刻み,遅れて申し訳ない,と言う気持ちで避難所を訪問したところ,みなさんから,おかえりなさい,私たちも負けないから頑張ってね,と声をかけていただき,涙を流しました。
そのときに,何のために僕たちは戦うのか,はっきりしました。
この1カ月半でわかったことがあります。
それは,誰かのために戦う人間は強い,ということです。
東北の皆さん,絶対に乗り越えましょう,今,このときを。
絶対に勝ち抜きましょう。このときを。
今,このときを乗り越えた向こう側には,強くなった自分と,明るい未来が待っているはずです。
絶対に見せましょう。東北の底力を。
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コメント
Yamameさん ブログ復活お待ちしておりました。
私は今年も飛島に行って来ましたがいつも出会える顔が欠けていて寂しかったです。
高校時代漢文で「国やぶれて山河あり 城春にして
草木深し」という詩がありましたが、自然は恐ろしいと同時に、変わらないその営みが心を癒してくれることもあるでしょう。
被害にあった方はお気の毒ですが、Yamameさんやご家族が無事で良かったです。
微力ながら日本赤十字を通して義援金送らせていただきました。
投稿: つな | 2011/05/14 20:51
つなさん,コメントありがとうございます。とても嬉しいです。また,義援金へのご協力ありがとうございました。
飛島は震災に伴う仕事のことがあり行けるような状況になかったのですが,そうでなくっても,その当時まだそういう気持ちにはなれませんでした。来年からはまた行きたいですね~。
沿岸部で鳥見を楽しめる状態ではないので,出かけたとしても当分は内陸の自宅周辺になりそうです。
国破れて山河あり…。そうですね。そういう詩がありましたね。
投稿: yamame | 2011/05/15 09:07