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2009/11/09

石巻-岩沼 2009/09/07

(石巻) 07:30 晴れ
(岩沼) 13:20 晴れ

 またもやシギチ探しだ。前回と同じようにまずは石巻から。

 石巻では,干潟東側にキョウジョシギ幼鳥が4羽入っていた。この4羽はすぐ足元にいて,餌を探して動き回っていた。

090907e_0110 090907e_0214 090907e_0231  キョウジョシギは「京女鴫」と書く。
 京女のように美しいことからこの名が付いたようだが,羽色が美しいのは♂夏羽だけで,♀も冬羽も地味な羽色だ。幼羽も,このように質素ななりをしている。
 幼羽は冬羽に似ているが,羽縁が白っぽく目立つのが異なるようだ。

090907e_0065 090907e_0165 090907e_0235  体格は「京女」のイメージとは全く違う。
 がっしりした逞しい体格で,足にも,嘴にも,石をひっくり返す力強さがある。英名の Turnstone そのものだ。
 体格だけ見ると,「京女」ではなく,肉体労働者のイメージが近い。

 ちなみに,昆虫界でも京都の舞妓さんに由来を持つ「舞妓茜(マイコアカネ)」がいる。
 これはとうがらしのように真っ赤になる小さなトンボで,♂は顔が青白く,舞妓さんが白粉で化粧をしたようになる。

 さて,さらに進んで干潟南側に回ると,小さなシギたちが動き回っているのが見えた。大人でも当年生まれのような トウネン だ。

090907e_0307 090907e_0328  トウネンの群れと出会うと,まずは何か混ざっていないか探すのが決まり。
 すると,すぐに変なシギが目に入った。トウネンよりひと回り大きくって,羽色も違う。何だこれは。珍シギか
 …て,落ち着いてよく良く見ると,なぁんだ~,ミユビシギだった。
 欲目が判断を歪めさせてしまう。
 よくあることだ。

 群れの本体の近づいていくと,今度はキリアイを見つけることができた。珍しい,というほどではないが,多くはないシギなので嬉しい出会いだ。

090907e_0680 090907e_0858_up  キリアイは「錐合」である。
 嘴が工具の「錐(きり)」に似ていることから付いた名前だということは,この嘴を見れば容易に想像できる。
 太めで長い嘴が先端付近で急に細くなり,やや下に曲がっている。シギの仲間は個性豊かないろんな嘴を持っているが,この嘴も独特のものだ。

090907e_1061 090907e_1065 090907e_1067  鳥の調査でバンディングをしている人はシギの嘴を普通に触っていると思うが,私にはその経験がない。しかし,こういう光景を見ると,シギの嘴は弾性があり,曲げることができることがよくわかる。
 泥に嘴を差しこんで餌を見つけたときは,意図的に嘴を曲げ,餌をはさんだりできるのだろう。とても興味深い。

090907e_1221_up090907e_1554  キリアイは頭の模様も独特だ。
 目を横切るようにあるのが「過眼線」。その上の白い部分が「眉斑」。そのさらに上が「頭側線」。さらにその上にある白い部分は何と言っていいのかわからない。図鑑の前のページに鳥の体の各部の名称が掲載されているが,頭側線の上は「頭央線」となっており,これが最後だ。名称がないので,頭側線の上の白線(又は白斑)としか表現できない。「副頭側線」とでも言うのだろうか。
 いずれ,普通の鳥以上に「しましま」の頭だ,ということだ。

 成幼の別はどうだろう。

090907e_0861 090907e_0854 090907e_1221  図鑑によると,幼鳥は背中のV字がヒバリシギのようにはっきりしており,また,足に黄色みがある,脇に縦斑がない,肩羽や雨覆の羽縁が黄白色,などの特徴があるようだ。この個体を見ると,これらの特徴をすべて兼ね備えているようだ。
 トウネンではないが,当年生まれの幼鳥のようだ。繁殖地が北極圏のようなので,子どもなのに,ずいぶんと長い距離を渡ってきたことになる。

090907e_1177 090907e_1181 090907e_0943  近くの1羽を舐めるように観察していたが,ふと気付くと,向こう側のトウネンの群れの方に,もう1羽が飛んできた。そして,移動するとき,なんと,泳いだ。
 泳ぐシギを見たのは初めてではないが,キリアイが泳ぐのを見たのは初めてだった。私にとってはシギ珍百景だ。
 足の蹼(みずかき)はどうなっているんだ,近くにいるキリアイを見ると,足に蹼は見えなかった。蹼がなくっても,泳ぐんだ。

 ここにはコオバシギも入っていた。

090907e_1273 090907e_1629  このシギも,キリアイ以上に出会うことが少ないので,これも出会って嬉しい鳥だ。
 ここでは毎年出会っているが,いつも秋の幼鳥で,今回もそうだった。同じ個体が定期的に飛来するのではなく,毎年同じように迷ってくる子どもがいる,ということだ。
 以前,蒲生で赤いコオバシギと出会ったことがあるが,赤い個体は何年も見たことがない。来春は,またここを通って北に帰ってほしい。

090907e_1559 090907e_1681 090907e_1702  赤いコオバシギとはぜひ再会したいが,このコオバシギ幼鳥の羽色(模様)も,とてもきれいだ。
 この羽の模様は,サブターミナルバンド(subterminal band)というらしい。体上面の羽の1枚1枚が縁取りされている。淡い色の幾何学模様の衣装をまとっているかのようだ。
 サブターミナルバンドって言葉,カタカナ(英語)でよくわからないし,専門用語(業界用語?)風で何となくいやらしいので,日本語で良い表現はないものか。

090907e_1642 090907e_1732  サブターミナルバンドは幼鳥特有のものだが,足の色が淡くて黄緑色なのも幼鳥の特徴のようだ。成鳥になるともっと黒っぽくなるようだ。さっきのキョウジョシギほどではないが,がっしり系の足だ。
 嘴は,図鑑では「黒色」となっていて,幼鳥の嘴についてふれているものはなかったが,この個体の嘴は黄色っぽい色だ。幼鳥はこんな感じの嘴が多いような気がする。淡い新鮮な色が混ざっているのは,コオバシギに限らず,幼鳥に共通する特徴かもしれない。

090907e_1574 090907e_1589 090907e_1748  コオバシギは,親戚のオバシギ同様,警戒心が薄いようで,すぐ近くを行ったり来たりしており,また,光の状態も良かったので,図鑑に使うような写真の撮影はばっちりだった。
 その上,なんと,右も,左も,ちゃんと翼がこちら側に見えるように伸びをしてくれた。大,大サービスだった。

 トウネンの中にはヨーロッパトウネンと思われる個体も混じっていた。

090907e_0541 090907e_0632 090907e_1107  事前にある方から情報をいただいていたのだが,たぶんこの個体のことだろう。成鳥は何度か見ているが,今回のは幼鳥だ。背中にくっきりと白いV字があるので,すぐにそれとわかった。ただ,顔付きがどうもトウネンぽく見える。jizzでヨーロッパトウネンと感じられない。

 たぶんヨーロッパトウネンで間違いはないのだろうが,自分なりに納得したい。

090907e_1031_up02090907e_1031_up01 まずこの写真でチェックしてみよう。
 左端の写真で全体のプロポーションを見ると,胴体が短く足が細く長い,というヨーロッパトウネンの特徴が出ているようだ。足は2番目の写真のとおり,平均的なトウネンよりずいぶん長く感じる。足が長く見える立ち方なので,それを差っ引いて見なければならないが,プロポーション的には条件クリアで良いだろう。

090907e_1031_up03_2 090907e_0906 090907e_0823  今度は尾の周辺を見てみよう。
 トウネンは個体差が大きいのだが,右端に比較対照用の写真を張ってみた。同じ場所にいたトウネンだ。
 三列風切と雨覆の軸斑の濃さを,1番目と2番目の写真と,3番目の写真と比較すると,確かにトウネンよりも軸斑は濃いようだ。軸斑の濃さの条件もクリアとしておこう。
 しかし,この個体は初列風切が尾を越えていない。初列風切が尾を越えることが多い,というヨーロッパトウネンの条件は当てはまらなかった。ただし,これは必須条件ではないようだ。

 さらに一番問題の顔付きだ。

090907e_0906_up01_2 090907e_1031_up04_3 080913_0211_2 070916_04903_2  ヨーロッパトウネンは嘴が細長いため,トウネンとは印象が異なって見えるはずだが,現場では,この個体に違いを感じられなかった。この程度の嘴は,トウネンとしても許容範囲かな,と思った。
 過去に撮影していたヨーロッパトウネン成鳥の写真と比較するとどうだろう。左側2枚が今回の個体の左右の顔,左から3番目が2008年9月,4番目が2007年9月に同じ場所で撮影した成鳥の顔だ。
 ん~,判然としないが,やはり違うような気がする。

 もしかすると成鳥と幼鳥の差だったかもしれない。
 冬を越すと顔付きが変わるかな。

090907e_0586 090907e_0656 090907e_0863 090907e_0897  背中の特徴も押さえておこう。
 上にも書いたように,この個体の背には白いV字がくっきりしている。トウネンも淡い色のV字がはっきりしている個体があるが,これほど明瞭な個体は見たことがない。これだけでもヨーロッパトウネンとしたいくらいだ。
 比較対照用に,ここにも近くにいたトウネンの背中写真(右端)を張っておこう。

090907e_1145 090907e_0971 090907e_1214  ちなみに,このヨーロッパトウネンは,よく寝る個体で,観察時間中,寝ている時間の方が長かったと思う。北極圏からインド・アフリカ方面に渡る鳥のようなので,迷いながらずいぶん長い距離を渡ってきたのだろう。こんな小さな体で,子どもなのに大変なことだ。文字どおり命懸けの旅だ。
 立って寝るだけでなく,終いにはペタっと座り込んで休んでいた。

 がんばれ。

 がんばれ,と言えば,同じ場所にいたこのミユビシギもとても印象的だった。

090907e_1190 090907e_1400  夏羽から冬羽に換わりつつある成鳥だ。
 ミユビシギは,北極圏から最大で南極圏まで渡る鳥のようだが,もうすでにこんな所で力尽きかけていた。まだ旅の最初の方かもしれないのに…。
 ときどきはしゃんと立つものの,次第に頭を下げることが多くなり,終いには,膝(人であればかかとの部分)を折って,うずくまってしまった。

090907e_1407 090907e_1420  鳥の子育ては大変な仕事で,子どもを大きく元気に育てるために,親はボロボロ,ヘロヘロになってしまう。成鳥,ということは,子育てを終えて疲れ切ったところで長い旅に出た個体なのかもしれない。
 最初の数分間は事情を想像できずに,日向ぼっこして居眠りしているようで,なんてめんこい姿なんだろう,と思ったが,事情に気付くと,とても微笑ましい光景には見えなくなった。

 がんばれ。

090907e_1246 090907e_1368 090907e_1412  ここには,やけに背が高く,足が長く見えるメダイチドリの群れも入っていた。
 オオメダイチドリかな,とも思ったが,それは欲目。オオメダイチドリであれば,もっと嘴が長いはずだ。
 ここにはオオメダイチドリがよく入るようだが,あいにくまだ一度も出会っていない。
 気長に出会いを待つしかないなぁ。

 石巻で時間を使いすぎてしまったので,急いで南下しなくては。

 で,岩沼。

090907c_0123  ここの休耕田は,数年このような状態で保たれているありがたい田んぼだ。荒れ地にも畑にもならず,かといって稲が植えられることもない。持ち主に大感謝だ。
 年によって,シギチが入ったり入らなかったりと当たり外れがあるが,今年は当たりだった。というか,この日はここにしかいなかった。
 あまり期待しないで通りかかったら,うじゃっと,シギたちが入っていた。

 「うじゃっ」の中身は,アオアシシギ5~6羽,コアオアシシギ3羽,ツルシギ1羽,タカブシギ3羽,クサシギ1羽だった。(数は概数)

090907e_2099 090907e_2163 090907e_2164  アオアシシギは警戒心が強いシギで,田んぼを迂回して,土手の方から順光側に回ろうとしたところで,向こう隣の田んぼに飛んでしまった。結構な距離があったのだが,そういう性質の鳥だ。もっと近くを通れば飛んでいなくなったかもしれない。
 いずれ,まだいてくれたし,飛翔写真も撮れたので,結果オーライだ。
 背中の白い三角が美しい。

090907e_1894 090907e_1898  少しずつ「だるまさんが転んだ」式に回り込んで,予定の場所に居つく。
 何とか飛ばさないで移動することができ,かつ,すぐ近くに1羽残っていてくれた。まもなく歩いて遠ざかってしまったが,じ~っと待っていても寄ってくることはほとんどない鳥なので,今回,近くから撮影できたのは幸運だった。

090907e_2000 090907e_2081  コアオアシシギは「田園の貴婦人」とも表現されるシギで,以前から,白くて小さな細い体を美しく撮影した素晴らしい写真が出回っている。私もコアオアシシギと初めて出会う前は,本の写真などを見て,憧れていた鳥だった。
 出会いがとてもとても楽しみだった。

090907e_2022 090907e_2105 090907e_2206  しかし,最初に現物と出会ったときは,正直,夢で膨らませていた風船がシュンッとしぼんでしまった。たしかに姿形は写真のとおりだったが,現実のコアオアシシギは動きがちょこまかしており,「貴婦人」という言葉の持つ優雅さとはほど遠かった。
 憧れの度合いが強すぎたのだろう。吉永小百合がうん○をしてはいけなかったように,コアオアシシギはちょこまか動いてはいけなかった。

 もちろんコアオアシシギ自身のせいではないし,私も,今は,美しいシギと認識し,落ち着いて楽しんでいる。

090907e_1940 090907e_1959 090907e_1979  タカブシギは畔に2羽休んでいたが,田んぼの中にこんな個体(右側2枚)もいた。
 一見して,ずいぶん黒っぽく見える。眉斑がくっきり白いだけで,胸から上が黒っぽい灰色の斑で覆われている。個体差が大きいシギだとは思っていたが,こんな個体は初めて見た。とても新鮮に感じた。
 黒っぽいと,引きしまった感じがし,何だか一段と格好良く見える。

090907e_1864 090907e_1873 090907e_1914  ツルシギは1羽だけいて,長い足で深い所を歩き,盛んに顔を水に潜らせていた。水の中に顔を浸けている時間の方が長く,息継ぎのために顔を上げているのではないか,と思うくらいの状態だった。
 右端の写真では背中しか見えていない。
 とても水が好きなシギだ。

090907e_2050 090907e_2066 090907e_2073  クサシギは他のシギがいた田んぼの隣の田んぼに1羽ぽつんと動かずにいた。
 最初背中を向けていたが,しばらく待っているとようやく横を向いてくれ,そのうち飛んでしまった。
 タカブシギやクサシギは,飛んだときのこの白い尾羽も魅力的だ。

 この日はこれでお終い。

 記録したほか,鳥の海や蒲生,名取などにも行ったが,何も見つけられなかった。

【観察できた鳥】(シギチのみ抽出)

キョウジョシギ,トウネン,ヨーロッパトウネン,ミユビシギ,キリアイ,コオバシギ,メダイチドリ,クサシギ,タカブシギ,アオアシシギ,コアオアシシギ,タシギ,コチドリ (13種)

【写真】

090907e_0047 090907e_0063 090907e_0147 090907e_1032 090907e_1045 090907e_0794 090907e_0849 090907e_1055 090907e_1050 090907e_1101 090907e_1132 090907e_1138 090907e_1589 090907e_1610 090907e_1620 090907e_1730 090907e_1159 090907e_0880 090907e_0880_up 090907e_0888 090907e_0890 090907e_0410 090907e_0474 090907e_0484 090907e_0598 090907e_0616 090907e_0632 090907e_0727 090907e_0913 090907e_0993 090907e_1107 090907e_1121 090907e_0003 090907e_1773 090907c_0094 090907c_0112 090907e_1919 090907e_2165 090907e_2166 090907e_1970 090907e_1805 090907e_2211 090907e_1879 090907e_1785 090907c_0129 090907e_1781 090907e_2237 090907c_0118 090907c_0133 090907c_0114
 

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